仕方アルマジロ

大学生活の記録

本郷、蘭州牛肉拉麺

 東京都文京区、本郷通りに面した家並みの中には多くの飲食店の看板が立ち並び、道ゆく人々の食欲をそそる。今回私が訪れたのはその中の一軒、ちょうど東京大学本郷キャンパスの南端、医学部の建物が立地するあたりの、通りを挟んだその向かいに店を構える、緑色の看板を掲げた中華料理屋、「蘭州牛肉拉麺」である。

 店の扉を開けば即ち、日本では嗅ぎ慣れぬ香辛料の香りが鼻を突き、空きっ腹の食欲を一層掻き立てる。
 代金は先払いだ。レジへ行きメニューに目を落とすと、なにやら料理の写真の上に赤色が目立つ。どのくらい辛味が強いのだろうか、と辛さに弱い私は心配になるが、ひとまず勇気を出して目玉商品であるらしい拉麺を注文する。880円のところを、学生は200円引きとなかなか親切だ。

[5月28日追記]

 値引きサービスは無くなったが、代わりに全員に卵がつくようになった。炊飯器で殻ごと味付けされており、黒っぽい煮卵のようになっている。他店で得た情報によると、どうやらこれは「蘭州たまご」と言うらしい。

 

 少食の私には関係のないことだが、確か無料で大盛りにも出来た記憶がある。
 拉麺を注文すると今度は店員が麺の太さを選ぶように言うのであるが、選択肢は確か細麺、普通、ニラ麺、太麺であった。「ニラ麺」は恐らく「平麺」の誤記だと思われる、平べったい麺である。後に何度か試した中ではこのニラ麺が最もつゆに絡みやすく、味わい深かった印象がある。

[5月28日追記]

 他店のメニューを参照したところ、この「ニラ麺」とは、ニラの葉の形に似て平たいことから着いた呼称のようであることが判明した。

 注文後、席に着いて料理の完成を待っていると、時折厨房から何かを叩きつけるような大きな音が聞こえてくる。よく見えないので詳しいことは分からないが、どうやら大きな麺の塊を叩いてこねているらしい。好奇心が掻き立てられる。
 更に待っていると時折、厨房の奥から長く節の聞いた声が、聞き慣れぬ異国の言葉を乗せて響いてくる。彼らの故郷の歌なのであろうか、はたまたムスリムの祈りなのであろうか。しみじみとした異国情緒に店内が包まれ、海外に来たかのような感覚にさせられるのが心地よい。

 

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 などと店の雰囲気に浸っていると、間も無くしてお目当ての拉麺が到着する。ラー油であろうか、スープに浮いた赤い香辛料がいかにも辛そうであるが、恐る恐る口をつけるとこれがそれほど辛くはない。
 これならば行ける、と思い、箸で全体に撹拌してからいよいよ麺を啜り始める。塩気の効いた味わいの後のぴりりとした辛さが心地よい。僅かに入ったパクチーの風味も箸の進みを一層早める。牛肉や大根の煮込み具合も丁度良く、固すぎず柔らかすぎない、噛んで味わいやすい食感である。
 麺はもちもちとした食感があって食べ応えがある。注文を受けてから手で打っているためか、時々麺が小さな塊のようになっている部分があるが、きちんと火は通っており、食べる上で支障はない。むしろ素朴さというか、手作り感のような何かを感じさせる良いものであるとさえ思える。
 余談だが、何度か試したが、麺の完食後スープを全部飲みきることは、かなり塩気が強いこと、辛味がそれなりにあることなどから私には不可能であった。私は少食であるため大抵麺を食べきるだけで満足してしまうのだが、いつかスープもじっくり味わってみたいものだ。

 総括すると、このラーメンは見た目ほど辛くは無く、塩気がそれなりに強い。また、麺にはコシがあって満腹感が強い。
 この味付けを他の料理を用いて表現するならば、麺の素材が違うのであまり比較にならないかもしれないが、「ベトナム料理のフォーからパクチーを減らし、代わりに塩気を濃くしたもの」であろうか。私はすっかりこの蘭州ラーメンの深い味わいの虜になってしまった。

 余談であるが、写真の箸袋に書かれたイスラームのシンボルである月と、”Haral”の文字に注目していただきたい。これはこの店の料理に、イスラーム教の戒律で禁じられた豚肉が使用されていないということである。どうやらこの店の経営者はムスリムであるようだ。
 中国人でムスリムといえば、代表的なのが新疆のウイグル族寧夏回族である。どちらも西方の奥地、シルクロード上に住む人々だ。蘭州の位置する甘粛省は両地域の中間にあり、それぞれとの関わりも深いことであろう。店主のルーツがそのどちらにあるのかは知る由もないが、異国の香りと音に満ち溢れたあの店の空間に腰を据えて目を閉じると、シルクロードの大砂漠の情景が浮かんでくるのは私だけであろうか。

 

関連リンク

 叔母のブログにおいてエイプリルフールのネタとしてこの記事を使用したので、参考までにそちらのリンクも掲載しておく。

lasvegas.livedoor.biz